インタビュー | 五十嵐桃子

インタビュー | 五十嵐桃子

「全部違うものになるように作っているので、1つ1つをお嫁に出すような気持ちで作っています。


現在石川県でガラス作品の制作をされている五十嵐桃子さん。ソフトで豊かな色味、不思議な形を持つガラスたち。そっと語りかけてきて見る人の想像力を膨らませてくれるような、彼女の作品が生まれる背景をちらりと覗いてみましょう。

彼女の作品はこちら



いつからガラスで作品を作ろうと思い始めたんですか?

何か手で作りたくて美大に入ったのですが、何の素材にするかは全く決まっていませんでした。大学1年生の時に陶芸、金工、ガラス、テキスタイルを授業でやってみて、一番触ったことがなくて未知の素材だったのでガラスを選びました。そこからずっとガラスで作品を制作しています。


なぜキルンワークという技法を使って制作をされているのですか?その技法の魅力もぜひ教えてください。

*キルンワークを選んだのは、実験のような制作の方法が自分に合っていたからです。一人でゆっくり考えながら作れるところもキルンワークのいいところです。型の形、詰めるガラスの形状、焼成温度…それらを少しずつ変えていくことで本当にさまざまな表情の作品ができます。

型にガラスを詰めてから窯に入れ、高温にしてガラスを溶かしたあとゆっくり冷ますので、最低でも3日は窯に入ったままです。中がどうなっているかはほとんど見ることができないし、溶けているガラスは触ることもできないので、どんなガラスになるか想像しながら制作する楽しさがあります。基本ガラスは言うことを聞かないので、想像していなかったものが出てきたりして…実験のようでとても面白いです。

*キルンワークとは電気炉と石膏の型を使ってガラスを成形する技法



作品に使われる色はどのようにして決めているのですか?

少し彩度の低いくすんだ色が好きなのでそういう色を使っています。絵の具のようにもともと色のついたガラスが売っているのでそれを使うのですが、焼いてみないと色味がわからないものが多く、とりあえず気になった色を買って焼いて自分の好きな色を探しています。

小箱の取っ手の形のモチーフになっているものがあるんですか?

山や星や風や水…、自然の中の形の決まっていないものから出てきたものが多いです。抽象的な形にしてあるので同じ作品でも人によって違うものに見えるかもしれません。箱の形をしていますが、使おうと思えば使えるくらいでいいかなと思っていて、機能面よりも見た目の面白さを重視しています。正直開けづらいと思いますが、頑張って開けてほしいです。笑


作るものの形はどういう時に思いつくのですか?

形を考えようと机に向かっている時には意外といい形が出てこなくて、お風呂に入っている時や食事をしている時など、あまり何も考えていない時にアイデアがふっと天から降りてきます。突然なので忘れてしまうものもありますが、覚えていたものをメモしておくようにしています。


何からインスピレーションを受けますか?

風景が多いです。夕日の色が綺麗だったり、雪が降っている様子や道に落ちる影が美しかったり、工房に行くまでの道だけでも素敵なものがたくさん落ちているので、常に探しています。あとは写真集や、画集を集めるのが好きなので、色の参考にしています。


作るときに大切にしていることを教えてください。

1つ1つを丁寧に作ることです。技法的にも同じものが出来ないのもありますが、わざと全部違うものになるように作っているので、1つ1つをお嫁に出すような気持ちで作っています。あとは手触りです。触って気持ちのいいすべすべ具合になるように研磨にはこだわって作っています。


制作しているときに聴いている最近お気に入りの音楽、もしくはラジオ等があれば教えてください。

洋楽やK-popを聴いています。日本語だと意識が耳にいってしまうので、聞き流せる海外の曲を探して聴いています。考える必要のない単調な作業の時は、オールナイトニッポンの聴き逃し配信を聴いています。時間があっという間に過ぎるのでおすすめです。


これからチャレンジしてみたいことは何ですか?

箱の形を作るのは楽しいのでこれからも続けながら、新しく鏡を使った作品を作りたいと思っています。鏡もガラスなのでいつか使ってみたいと思っていたのと、自分の顔や外の風景が写ったりするので、それを込みで作品にしたらどうなるのかなと気になっています。使うこともできるオブジェのような鏡が部屋にあったら素敵じゃないかなと。

Studio and profile photo credit 2022, Momoko Ikarashi


店主のつぶやき

たくさん並べられた彼女の色とりどりなキューブをはじめて見た時は、ジェラート屋でどの味にしようかと迷う時のような胸の高まりを感じました。しばらく悩んだあと、最初に目に止まったものにしました。ソーダに溶け合うアイスのような、水色とミルキーホワイト色のキューブ。
どんな味なのだろうかと、思いを馳せる時のようなワクワク感や、選ぶ楽しさとともにあなたの感性をくすぐる作品が見つかりますように。

五十嵐桃子

新潟県生まれ。武蔵野美術大学造形学部工芸工業デザイン学科ガラス専攻卒業。ガラス工芸の中でも電気炉を使うキルンワークという技法を主に使い、ガラス素材の新しい表現を模索しながら、蓋物やオブジェなどを制作している。

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Website: https://www.momokoikarashi.com/

Instagram: @momokoikarashi